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Per second」インタビュー


猪瀬隆

最終回は!われらが主宰、アニュータの全作品の総合演出を手がける猪瀬隆氏です。またオリジナル脚本も今回で3作目!そして、えー、今回は最後ということでスペシャル版。すごく長いインタビューです。それゆえにそこまで内容のない部分も…。ちまたでは、まとめろとの声も挙がりましたが、あえて、ほぼそのまま載せました。もし、時間のある人はゆっくり見てください。では、どうぞ。

猪瀬隆
Takasi Inose
脚本、演出、相馬役



アサヒ: お疲れ様です。今回はどうでしたか?
猪瀬: なんだよ、今回って。
アサヒ: いやいやいや(笑)。猪瀬さん的に今回はどうだったのかな、と。
猪瀬: 今回はね、楽しかったよ。
アサヒ: ああ(笑)。
猪瀬: ツラかったけど。
アサヒ: 他にはないんですか?終わってみて。今回は役者も加わって作・演出、役者としての猪瀬さんだったんですけど?あ、じゃあ「作」の話からして下さい。
猪瀬: あ、いいよ。どんとこい。
アサヒ: なんで携帯の工場の話にしたんですか?
猪瀬: あ、だからバイト探してて携帯の工場が一番時給よかったから。
アサヒ: 他はなかったんですか?バイト。
猪瀬: ん、なんか遠くまで行くのがおっくうだったから地元でやろうかなと思って。で、そんなかで地元のアレを探してたら時給1200円で一番時給がよかったからやりました。
アサヒ: はぁ(笑)。それは書いてもいいんですか?
猪瀬: いいよ別に。好きにしてくれ。
アサヒ: あ、まじですか(笑)。わかりました。じゃあ、けっこうバイトはどこでもよかったんですか?
猪瀬: ん?どこでも、って?
アサヒ: あ、だから、携帯のところがおもしろそうだった、とか…
猪瀬: いや、ない。
アサヒ: あ(笑)。そんなんも考えるわけもなく、とりあえず金に…
猪瀬: そう。とりあえず金作ろうと思って。すっげー働いたから。あ、でも、今回の話はね…実話でもないけど、あんまりウソは書いてない。
アサヒ: そうなんですか。
猪瀬: ま、デフォルメはしてあるけど。品質保証部なんて、あんなんじゃないけど(笑)…
アサヒ: あ、はい(笑)。
猪瀬: けど、でも、俺の中ではああいうイメージだから。「うっさい」っていう…
アサヒ: 全数検査もあったっていってましたもんね。
猪瀬: 全数検査もあったね。なんかね、こう…ね、「蜂」みたいな感じ。
アサヒ: え、おばさんとかなんですか?
猪瀬: いや、若い子、若い子。若い子がね、取りにくるんだよ。
アサヒ: え、全部女の子ばっかなんですか?
猪瀬: そうだよ、そうだよ。品質保証部なんて男いねえよ。あ、一人いたかな…若いの…
アサヒ: ほぉ。
猪瀬: ま、みんな女ばっかだよ。おばちゃんもいたけどね。


アサヒ: 柳班長もいたんですよね?
猪瀬: 平柳班長ね。
アサヒ: 平柳(笑)。平柳班長。
猪瀬: そう。平柳班長(笑)。
アサヒ: あんな感じなんですか?
猪瀬: そう、あんな感じ(笑)。
アサヒ: ほんとですか(笑)?
猪瀬: もうちょっとギャグ言う人だったんだけどね。でもほんとに弱い。ガブみたいに弱々しい(笑)。ほんと、しいたげられてるって感じ。
アサヒ: そうなんすか(笑)。猪瀬さんとかとも結構しゃべったんですか?
猪瀬: 結構、ん?めちゃくちゃしゃべったよ。栗ちゃん並にしゃべったよ。いや、あのね、俺も最初情けない人だなぁと思ったの。けど、なんかねカット機にね…
アサヒ: カットキってなんですか?
猪瀬: カット。部材をカットする。プラモデルみたいに同じ部品が8個くらいついてんのよ。それを切らなくちゃいけなくて、切るマシーンがあったの、ま、マシーンっていうか、ボタンを押すとこう、ガシャーンっとね、やるマシーンがあって…
アサヒ: はい。
猪瀬: …で、それがね、なんか、キレが悪かったんだよ。俺がやってたんたけど。切っても完全に切れなかったりして、で班長に見てもらったの。したら、そんとき結構修理に時間がかかるわけ。で、ま、修理っつっても、台座のところに切れが悪いから、ちょっと台座をもちあげてセロテープを貼るだけだったんだけど…
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: セロテープ貼ってちょっと厚みがでるじゃん。なんかこう…下が盛り上がるじゃん。こう0.何mmか… でこううまくカット出来るわけよ。
アサヒ: はい。
猪瀬: …てことだ。
アサヒ: はい?(笑)いやいやいや(笑)


猪瀬: あぁ間違えた(笑)。で、とりあえずセロテープはすでに貼ってあったわけよ。で、それをはがすのに班長はこう…結構時間がかかっちゃったわけ。
アサヒ: はい。
猪瀬: で、そんときは俺は後ろで見てるわけ。ね。 で、そんときに話をしたのよ。
アサヒ: え?なんですか、深い話をですか?
猪瀬: あ、深い話ってわけじゃないんだけど、「どこに住んでんの?」とかって。「あ、じゃここまでは車で?」とか。まさにあのシーンの…
アサヒ: あ、あのコーヒーの(笑)。
猪瀬: そう。コーヒーのシーンに近い会話が繰り広げられていたわけなんだけれども…
アサヒ: あ(笑)、あの微妙…な。初対面っぽい…
猪瀬: そうそう。初対面っぽい感じね。「いや、この近く…で、花屋…を」とかね(笑)。
アサヒ: はいはいはい(笑)。
猪瀬: で、「あ!どこですか?」「え、あーあの駅の反対側の…」「へぇー、あ、西友かサティのほうですか?」とか
アサヒ: 西友かサティのほう(笑)
猪瀬: そうそう。それで、ま、その話から花の話になったわけ。で、「お花とか結構詳しいんですか」とか
アサヒ: はい。
猪瀬: で、「あーまぁ…それなりに…」って、まさにあの通りなんだけど、前半シーンの…
アサヒ: はい(笑)。え、じゃあその平柳さんは花詳しいんですか?
猪瀬: ま、それなりに…なんか知ってて、それで、それは俺が勝手に作ったんだけど、で、「じゃ、なんかお花屋さんとか継ぐんですか?」っていう話をね、してて…
アサヒ: はぁ。
猪瀬: で、「いやぁ、継ぐ気はあんまないですね(笑)」「え、じゃあ何かやりたいことがあるんですか?」みたいなね、ことを聞かれたから、「あ、今はちょっと演劇やってて…」みたいな話をしたんだよ。
アサヒ: はい。
猪瀬: したら「あ、演劇ですか〜。」みたいな話から、結構演劇知っててさ。ちょっと古いんだけど。ま、俺もあんま知らなかったから、なんとなく相づち打つ程度で…
アサヒ: はい(笑)。


猪瀬: で、そこから小説の話になって、結構詳しくてさ。で、そんときはそれで終わったのかな。そのあと、休み時間とかに話す機会があってさ。で、そこで「あ、じゃあ映画とかも好きなんじゃないですか」みたいな話しになって…で、そのあとは「あ、じゃ、どういうお芝居やってんですか?」って聞かれて「あぁ、まぁ…」と言って。うん。でもこんな感じで結構詳しいんだよ。「○○って知ってます?」「いや、知らないですね」とか。それで、すっげーなこの班長、って… 岩槻にもこんな人いるんだ、って。
アサヒ:

それはいるんじゃないですかね(笑)。

猪瀬: いや、でも初めはバカにしてたからさ。ガブみたいな感じで弱々しいから(笑)。そんで、それはそれでね、なんかきれいな人っつうか、心のきれいな人だなって思って…その人が、ま、やっぱ組立だから…ああいったようなトラブルが起こるわけよ。こう…製造部のほうから取立てにガァーッと来るわけ。
アサヒ: はい。その日のノルマがどうとか…?
猪瀬: そうそう。で、若いやつとかに「コレだけしか出来てねぇのかよ!!」って
アサヒ: はい(笑)。あ、そうなんですか(笑)。
猪瀬: そう。なんか超かわいそうだった(笑)。平柳班長。で、品質保証部は保証部でさぁ、こう… なんかそんときSANYO電機の0113っていう部材をやってたんだけど、それがねなんかねゼリー状のボタンなのよ。こう…ちょっとツメが触れるとすぐ傷が入っちゃうようなやつで、それがもうね…不良がガンガン出ちゃって…
アサヒ: …はい(笑)。


猪瀬: で、全数検査になって、ま、サイレンは鳴らなかったけど(笑)。でもあんな感じ俺の中では。で、そんな中でさ、技術部ってのがあるんだけど、そこが…普段は一回のカットで2つの部材を切るんだけど、そこがカットの刃をケチって、実験的にね、「刃を半分にしましょう」とか言っちゃって、刃を半分にしたら部材が1つしか切れないから時間が2倍かかっちゃうわけよ。でもなんか技術部は半分にしましょう、半分にしましょう、って…(笑)。
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: だからさ、もうassy(製造部)からすごい取り立てきて、品証(品質保証部)からは、こう…NGを出さないように「ていねいにやってください」とかいって監視の人とか来ちゃってさぁ、それでいながら技術部からはさあ「刃を半分にしてくれ」とかいって(笑)、で平柳班長ほんとにまいっちゃてさぁ(笑)
アサヒ: はい(笑)。あ、じゃあ技術部の通りにしてたらこれまでの1/2しかできないんですよね?
猪瀬: そう、そうだよ。
アサヒ: え、でもそれはなんでなんすか?
猪瀬: あ、だから技術部のほうもこれはこれであるみたいでさあ、こう、刃が予備がないとかどうとか…いろいろいってたんだけど、よくわかんないんだよ、俺も(笑)…
アサヒ: はあ(笑)
猪瀬: だけどとにかく半分にしろ、半分にしろって(笑)で、俺は当事者だったのよ。だから俺もほんとまいっちゃってさあ、そんで、今回でいう相馬班長みたいな人がね、製造部にいて、佐々木班長っていう人なんだけど、相馬班長のモデルなんだけどね。
アサヒ: はい。
猪瀬: その人が製造部とはいえ、人の人員の配置とか生産量とかの管理をやってたわけよ。 いろんなところを行ったり来たりしてるから。で、俺みたいに調子がいいのよ、すごく(笑)。 「ほら!源ちゃん、どぉ?」とか言っちゃってさあ。もう…だって、誰かとか呼ぶときにさあ 「猪瀬さん!ここに五分後集合ぅ!」みたいな、まさにあんな感じなんだけど、そう、まさに パクリなんだけどね(笑)。
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: そうそう。「〜でしょ、これは、なんでかっていぅと!」とか「おれがいぃたいのは…」とかね。 まさにあの通りなんだけど…
アサヒ: そのままですね(笑)。
猪瀬: そう、モデルがいたんだけど、でその人が仲良かったのよ、佐々木班長と平柳班長。それで、平柳班長が根をあげちゃってさあ、「ちょっと…もうちょっとassy量少なくしてよ」とかいってたのかな、佐々木班長も流されちゃう人だから、「よし!やめよう!」とかいっちゃって いい加減なんだけど、それでね、その様子を見てねこう…アゴで使われちゃいまくってる人なんだけど、でもちょっと落ち着いた話をしてみるとね、こう…感受性を持ってるな、って思ったのが始まりなんだよ。 「あ、これはネタになるな」って…
アサヒ: はあ。
猪瀬: それで、俺も当事者だったし、ね。用は--Gだよね。芝居でいうところの。--Gの当事者で…全数検査でラインストップになったとき、平柳班長とかゴミとか集めてるんだけどそんときね、俺とばったり会っちゃってさあ、で、もう…「今日飲みにでもいく…?」とか言われたときにさ、なんかこう… グッとくるものがあったね(笑)。
アサヒ: はい(笑)。


猪瀬: 結局ね、1ヶ月近くやったのかな。したら平柳班長さ、別の工場に左遷になっちゃってさぁ、ていうか応援って形でとんじゃって…
アサヒ: そうなんですか(笑)?
猪瀬: そうそう。いなくなっちゃってさぁ(笑)。それはなんか別の工場がノキアをやってたんだよね。
アサヒ: ? ノキアってなんすか?
猪瀬: ノキアってほら…携帯電話であんじゃん、世界的に有名な…ノキアっていうメーカーがあるんだよ。
アサヒ: はぁ。
猪瀬: そう、世界シェアNo.1なんだよ。ノキアは。スイスかどっかかなぁ…そこらへんの会社で、 それがその工場請け負っててさぁすごい忙しくなっちゃって…
アサヒ: あぁ… じゃ、結構すごいんじゃないですか?そこの工場も。
猪瀬: あ、そうそう。いや、ま、でもうちの工場もすごいんだよ。ま、でもその工場同士、近くなんだよね そこにね、応援になっちゃって…いなくなっちゃったのよ。で、寂しいなぁ…って思ってて、でね、急遽佐々木班長が組立を見るようになったんだけど、もう、メッチャクチャだよ(笑)… 佐々木班長いい加減だからさぁ、毎朝毎朝…平柳班長の時はさ、朝礼とかやってたんだよ。 「基本方針!」とかいってほんとにやってたの。
アサヒ: あ、ま、でもありますよね。やっぱ。
猪瀬: そう。こう…「品質基本方針…」とかいって、ま、もう忘れちゃったんだけど、やるんだよ。そう、で、毎日やってたのがさ佐々木班長になったら朝礼やんなくなっちゃてさ(笑)、すごい 手抜きになっちゃたんだよ。でね、俺が辞めるときに…俺、結構佐々木班長も好きだったんだけど 俺がよく働いたからさ、「今日飲み行くか?赤ちょうちん?」なって…
アサヒ: そうなんですか(笑)。
猪瀬: 「赤ちょうちん行くか(笑)?」「あ、いいんですか?」ってなって、「じゃごちそうしてやる。」ってなって「赤ちょうちんっていってもなぁ、店の名前は鳥政だ」って…
アサヒ: いや、よく意味がわかんないんですけど(笑)
猪瀬: ま、意味がわかんないんだけど(笑)、んで連れて行かれてさ、平柳班長の話をしたのよ。 仲良かったから。したら平柳班長さマンガとか少女マンガとか映画とかねいろんなの詳しくて、自分自体もバンドやってたんだって、で、ギターとか弾くんだよ。
アサヒ: はぁー、すごいですね。
猪瀬: でね、普通の作業着とかを着てるときはホント情けない感じなんだよ。何回も言ってるけど。でもね、来るときは普段着だから、そんときはなんかね…こう… ドラゴンの刺繍の入ったジャンバーを着てたりね(笑)、ちょっとね突拍子もない感じなんだよ。
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: でね、車とかもなんか、ちっちゃいお洒落な、こう…ヨーロッパチックなのに乗ってたりとかしてさ、そんな人なんだよ。で、あー、なるほどね。とか思ってさぁ。ガブだな、って思って。
アサヒ: (笑)なんでガブさんなんですか(笑)?
猪瀬: いや基本的にあんな弱々しいのはガブしかいないって思って。
アサヒ: はぁ。
猪瀬: ま、でそういう成り立ちがあって、やろうと思ったんだよ。あ、これ物語になるな、って。
アサヒ: なるほど。


猪瀬: ま、ションベン出すっていうのはあれなんだけど、あの、おれのじいちゃんが昔バス停とかでうずくまっちゃってしちゃった事があって、それで今回やろうかなって…
アサヒ: あ、じゃそれはやろうと思ってたんですか?
猪瀬: そう。それはね。ま、でも失禁してるってわかった人がお客さんの中で何人いるかわかんないけど(笑)。
アサヒ: たしかに(笑)。見てる俺もわかんなかったっすね。そんなに。
猪瀬: わかんなかったね(笑)。
アサヒ: はぁー。
猪瀬: そういう流れで、今回の作品は出来てる。
アサヒ: なるほど。
猪瀬: あ、ま、でも生産計画部っていうのは無かったんだけど、ま、わかりやすく品質保証部と対立するっていう意味で作ったんだけど。あ、でね、ソルジェーニツィンのイワンデニソヴィッチっていう本があんのね。で、そん中に、生産計画部っていう恐怖の…ノルマを発表する、部があって、あ、これいいな、と思って、参考にした。てかパクった。
アサヒ: あぁ。じゃいろいろルーツがあるんですね。
猪瀬: そうそう。で、俺、ソルジェーニツィンはもともと好きでイワンデニソヴィッチは今度おまえに読んで欲しいんだけど…
アサヒ: え?俺にですか(笑)。
猪瀬: そう(笑)。読んどいて欲しいんだけど、あん中に自分の仕事のこだわり…とかをいろいろ述べているわけよ。刑務所での強制労働なんだけど、そん中でもこう…ね、レンガ積みでもねレンガを積むときノリはね全体に塗らないで片方に寄せて、積むんだって。で、レンガを置くときにこう…流すように積むと、外にはみ出ないんだって。とかね。
アサヒ: あー、ありますよね、そういうの。バイトとかでも。
猪瀬: そうそうそう。そういうこだわりチックなところもなんか俺出したかったから、あの、冗長のように感じた、あの指サックのシーンとかはね…こう、どうしても切れなかったわけよ。
アサヒ: ああ(笑)。冗長のように感じたあの(笑)…
猪瀬: そう。あれは冗長のように感じんだけど、どうしても俺は切れなかったわけよ。あのシーンは捨てがたいわけ。
アサヒ: (笑)。なるほど、今わかりました、俺も(笑)。そうなんすか。
猪瀬: 「なぁんでこんな?」って感じでしょ?
アサヒ: たしかに。あそこホントにシーンっとしてますもんね。
猪瀬: あそこは俺のね、こだわりのシーンだから。
アサヒ: ほお。…ああ、いいっすね。こういう話はそうそう聞けないですからね。
猪瀬: あまりね、言ってないからね。
アサヒ: はい(笑)。


猪瀬: で、まぁ、途中途中の変な動きをするキャラがいっぱい出てきたじゃない。
アサヒ: はい。
猪瀬: あれはちょっとね、あの…なんつうの…俺が昔やってた露劇時代のチェーホフ、あれもひさびさにやってみたいなって思って、ああいう風にした。あ、でもこれは演出面かな。
アサヒ: ああ。演出面。じゃあの辺は露劇チックな所なんですか?
猪瀬: うん。昔はねああいうことばっかりやってた。「分けわかんない」って言われてたからね(笑)。
アサヒ: はい(笑)。じゃ今回で言うとそれに代表されるのはどの辺なんですか?
猪瀬: あ、和佳子とか、亮平の途中のアレとか…
アサヒ: イザベルとか?
猪瀬: そうイザベルとか。
アサヒ: 英士の途中のやつとか。
猪瀬: そうそう。
アサヒ: はぁ(笑)。露劇時代はあんなことばかりやってたんですか。て、ことは戻ったっていえば戻ったんですか?
猪瀬: そう…だね。ま、でも、ああいう変なキャラばっか出すっていうのは基本的に好きだからね。
アサヒ: ああ。「櫻の園」から参加の俺にとっては、普通に、変わったーと思いましたけどね。
猪瀬: ああ、そうだよね。
アサヒ: 「櫻の園」からあと3つは割と普通な感じの人ばっかりだった印象だったんですけど。
猪瀬: わりとナチュラル思考だったよね。ま、ナチュラルに飽きたな、と。
アサヒ: はい(笑)。なるほど。じゃあ役者のほうの猪瀬さんはどうですか?
猪瀬: 役者はね…ま、セリフ覚えるのが大変だったけど、えー、本番週入って、ゲネの2日前にやっと覚えたくらいだから。
アサヒ: はい(笑)。あれ(相馬班長)って猪瀬さんがやるはずだったんですか?初めから。
猪瀬: そうだよ。
アサヒ: もうあれはやる気満々で書いたんですか?じゃ?
猪瀬: いや、やる気満々っていうか、佐々木班長知ってるのは俺だけだから、俺しかできねぇなって思って。
アサヒ: ああ。
猪瀬: なんとも伝えにくいものがあったからね。佐々木班長の心情は。他の人に。
アサヒ: あ、じゃそれが結構本番週になってのしかかってきたんじゃないですか?大変さとして。
猪瀬: そうだね… あぁ、ま、でも土ソワからだね。いいな、と思ったの。
アサヒ: 役者がですか?
猪瀬: 役者が。
アサヒ: 土ソワって・・・(爆笑)。ってもう半分終わってるじゃないですか(笑)。
猪瀬: 半分終わってる(笑)。そうだね。
アサヒ: なるほど(笑)。
猪瀬: ま、でもね、相馬班長に関しては…わかりやすいキャラだし。


アサヒ: ま、たしかに。いろいろ立て直しましたもんね。なにかと。
猪瀬: 相馬班長出てくるとアレだろ、場も盛り上がるだろ。
アサヒ: はい(笑)
猪瀬: 袖とかすごかったからね。
アサヒ: 袖ですか?
猪瀬: 俺が出てくるときに。
アサヒ: それって別の意味じゃないんですか(笑)?
猪瀬: アレだね。軍艦巻きのあたり…
アサヒ: ああ(笑)。あんなにいっぱいいる袖の人が。
猪瀬: そう。あのあと全体ミーティングのシーンだから、袖にみんな待機してんだよね。上前の袖とかね。
アサヒ: はい(爆笑)。そうなんですか(笑)。
猪瀬: しかもアレだよ、愛沢くんが「バクーニン7…」とか言ってる時、俺も袖にアピールしちゃてんの(笑)。
アサヒ: そうなんすか(笑)。アピールって…
猪瀬: そうだよ。上袖では大爆笑。
アサヒ: ああ(笑)。なるほど。
猪瀬: ま、よかったね。今回は…「Babi cajamur」の時もそうだけど元ネタがしっかりあったから。
アサヒ: ああ。
猪瀬: バックグラウンドが。だから結構リアルに。工場は工場でありきたりの工場じゃなく。リアルな工場が描けたかなと。
アサヒ: アンケートにも「なんでそんなに知ってるんですか」的なことも書かれてましたからね。
猪瀬: そうだね。ま、それは、働いてたからね。ネタにしよう、と。
アサヒ: はい(笑)。てことは、まぁ、次回作は?
猪瀬: 次回作… 裁判モノやろうかな。
アサヒ: 裁判モノ(笑)。裁判モノってどう書くんですか?
猪瀬: いや、わかんないけど(笑)。裁判モノはやっときたいんだよね。
アサヒ: はぁ、そうなんですか?
猪瀬: 裁判モノか金融モノね。
アサヒ: 金融モノ(笑)ま、たしかに。あーでも俺どっちかって言うと裁判モノがいいですね。


猪瀬: 俺ね、一回傍聴したことがあんだよね。興味あって。
アサヒ: そうなんですか?できるんですか、あれ。
猪瀬: おお、余裕でできるよ。
アサヒ: え、全く知らない人とかですよね?
猪瀬: そうそう。でもできるよ。あ、でも怖かったけどね。あんとき俺が聞いたのがオウム関連のアレだったから…
アサヒ: まじですか(笑)?
猪瀬: けっこう記者とかもいっぱいいたんだけど…
アサヒ: どこで見たんですか?
猪瀬: あ、あのあそこ、霞ヶ関の、東京地方裁判所。
アサヒ: めちゃでかいじゃないですか。
猪瀬: そう。めちゃでかい。で、なんかね、「傍聴したいんですけど…」って行ったら、台帳を見て「じゃどうぞ選んでください」って言われて、普通に入れた。
アサヒ: はあ。そしたらオウムの…
猪瀬: そう。でね、学食じゃないんだけど、食堂もあって安いんだよ。裁判所。
アサヒ: はぁぁ(感心)
猪瀬: 今度行こうぜ、裁判所。
アサヒ: あ、はい(笑)。ま、いいですけど(笑)。はい。むしろ俺もそういうの見てみたいです。
猪瀬: 民事モンでもいい?
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: あ、でもね、刑事モンがおもしろいんだよね。裁判所。
アサヒ: いや、おもしろいって言われても(笑)。
猪瀬: そうなんだよ。結構。
アサヒ: え、でも1回しか見てないんですよね?猪瀬さん。
猪瀬: 1回しか見てない。ま、だからもし裁判モノやるなら何回も足を運んで…
アサヒ: そうですね。あ、じゃあアレですか。とりあえずこれからはまたバイト探しですか?
猪瀬: そうだね。ま、でも今回も工場に行きたくて行ったわけじゃないからね。単純にバイトとして…
アサヒ: じゃ公演後はとりあえずはまた新しいバイト探しで
猪瀬: そう。ま、でもそこで衝撃的なことがあればそれを題材にするかもしんないけど。衝撃的なことがなければ、また考えないとな。
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: やっぱりね、知らないものをやると「Collision course」みたいにわけわかんなくなっちゃうから。
アサヒ: 後日談ですね(笑)。
猪瀬: うん。あ、ちょっとアサヒ、トイレいっていい?
アサヒ: あ、はい、いいですよ。

  (主宰氏、トイレへ)

   (3分後)

猪瀬: あー悪い悪い。あーでも今回楽しかったな、俺。
アサヒ: そうですか(笑)ずっとそれ言ってますよね。
猪瀬: 楽しかったね。
アサヒ: あ、じゃあぶっちゃけ話してくださいよ。今だからいえるって言う。
猪瀬: ぶっちゃけ?あー、ぶっちゃけ検品隊と部下1、2はかわいかったね。
アサヒ: はい(笑)。いやいや、それを書いてどうするんですか(笑)?
猪瀬: そうだな。ま、でもよかったな。
アサヒ: よかったんですか?
猪瀬: よかったね(笑)。あれは楽しかった。すっごく(笑)。


  ※ここから約10分はぶっちゃけすぎなのでカットします…


アサヒ: …あ、はい(笑)。じゃあ最後に情宣(情報宣伝パフォーマンス)の話してくださいよ!
猪瀬: なんだよ!情宣の話って?
アサヒ: いや、だから、今回好評だったじゃないですか、情宣。
猪瀬: パフォーマンス?そうだね。
アサヒ: で、なんであんな感じになったのかというお話しを。
猪瀬: あれ、ちょうどね、あん時は音楽的な方向が全く見えなくて、ハル(音響チーフ)とさぁ探してたのよ。で、いろいろ考えたらさぁ、ちょっと今回工員っぽくてプロレタリアートな感じだったから、プロレタリアートってわかる?
アサヒ: いや(笑)。わかんないっす。
猪瀬: え(笑)?
アサヒ: いやわかんないっす(笑)
猪瀬: バカ!
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: で(笑)、工員とか労働者とか、労働者っぽいことをプロレタリアートっていうんだけど、
アサヒ: プロレタリアート。
猪瀬: うん。あの…労働者っぽい感じでいえば、「ソビエト」だな。って思って… で、今回の芝居が工場でしょ。
アサヒ: はい。
猪瀬: 工場っていえばソビエトだなって思ったわけよ。ね。
それで、ロシアっぽいっていったらなんだろう…と思ってそこで、「Leningrad Cowboys」を俺は知ってたから、あ、いいなと思って。しかも今回の芝居にピッタリだな、と。
アサヒ: はい。
猪瀬: で、俺CD無くしちゃってて、もう持ってなかったからCDを探しにいったんだけど、どっこにも無いのよ。で、どっこにも無くって、1枚だけ渋谷で「Mongolian barbecue」を見つけて、そんでその一枚は俺がたまたま持ってなかったCDだったの。だから「あ〜どうなんだろうな〜」と思って、ま、でもしょうがないから買っちゃって、そんで聞いてみたらあの曲が入ってたからこれはきた!と思って…
アサヒ: で、使おうと。
猪瀬: そう。ずっと聞いてたら、ね、その頃…なんだっけな…北朝鮮のアリラン祭が…
知ってる?北朝鮮のアリラン祭?
アサヒ: …いや(笑)、知らないです…(笑)
猪瀬: バカ!
アサヒ: はい(笑)
猪瀬: なんかねそんな印象があって…
アサヒ: なんすかアリ…ランサイ…?
猪瀬: そう、アリラン祭。…バカ!
アサヒ: はい…(爆笑)。
猪瀬: (笑)で、大民衆が遠くで色の紙を持ってて、裏返すと絵が出来てるって言う…
アサヒ: なんか…学校とかでやってそうな…
猪瀬: そうそう。なんかそんな共産主義っぽい感じを思い浮かべたわけよ。で、これで曲に合わせて行進しようと思って…行進だけじゃつまらないから、後ろに核兵器を(笑)、核兵器ををおっ立ててやったらこりゃ面白いんじゃないかと思ってね、そっからだね。
アサヒ: それであんな感じになったんですか(笑)。
猪瀬: そう、それであれになったの。ま、だから元々は「Mongolian barbecue」からだね。曲から来たみたいな。
アサヒ: ああ、ま、でも面白かったですよね。
猪瀬: 面白かったよな。あのでっかい筒が(笑)。


アサヒ: 普通に見ててわけわかんないですからね。
猪瀬: まあな。でも、ま、あれで結構来たからな。「メンストパフォーマンスを見て来ました」っていうのが。
アサヒ: ああ。なるほど。じゃそろそろそろこの辺で総括を。
猪瀬: うん。…まぁ今回はよかったよな。批判も多かったけど。
アサヒ: 多かったんですか?
猪瀬: 多かったよ。いろいろとね。ある事は事実だね。
アサヒ: はあ(笑)。
猪瀬: ま、でもね。いいかなと。全部事実に基づいてるし。俺的にはウソないし。
アサヒ: ああ。
猪瀬: 映像もよかったしな。映像よかったよな?
アサヒ: よかったですね。
猪瀬: どれが一番好き?
アサヒ: あぁ、俺的にはオープニングですね。
猪瀬: オープニング?正しい組み立て。
アサヒ: はい。
猪瀬: あぁ。俺はやっぱミョンドンだな。
アサヒ: それは猪瀬さんが…(笑)
猪瀬: ああ、もう、ミョンドン大好き。
アサヒ: セリフが。「ミョンン、ドンンン」
猪瀬: そう。でもそういえば、各部門のみんなに言ってるってわかったかな?お客さんは。
アサヒ: ん?んん… どうなんでしょうかね。わかる人はわかったんじゃないですか?話し合いって事なんですよね。話し合いっていうかミーティングっていうか。
猪瀬: そう。…ま、あれはよかったよな。
アサヒ: はい(笑)。
猪瀬: ま、今回は満足。
アサヒ: ああ、はい。あ…!そういえば今回は拍手が一番よかったですね。
猪瀬: 拍手?
アサヒ: 楽日は最後拍手が生まれてたじゃないですか。自然に。
猪瀬: ああ、そうだね。
アサヒ: あれはもうよかったですね。
猪瀬: だな。ま、今回はわかりやすかったしな。
アサヒ: ですよね。よかったですよね。
猪瀬: よかったな。
アサヒ: はい(笑)。

  (2人で大爆笑)

アサヒ: あ、ではホントにそろそろこの辺で…
猪瀬: なんだよ、もう少ししゃべろうぜ。
アサヒ: え(笑)。いやいやいや(笑)ほんとに。もう1時間越えてるんで(笑)。
猪瀬: そうか(笑)。
アサヒ: はい(笑)。あ、では、ありがとうございました。
猪瀬: おう。

そんな猪瀬隆さんへのメッセージは、info@anjuta.netまで。





猪瀬隆

猪瀬隆
takasi inose


アニュータの前身、露劇の時代からすべての作品の演出を手がける。今作品でその演出も18本目。また、Anjuta3からはオリジナル脚本を手がけ、今回で3作目の作品となる。初めは猪瀬氏一人だった劇団も、今では4、50人をも動かす大きな劇団に。それもこの猪瀬氏の実力があってこそでしょう。「滑稽さゆえにもの悲しい」世界観をひっさげ、アニュータは、進化します。




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