Anjuta10
「ロミオとジュリエット」 作:W・シェイクスピア/演出:猪瀬隆 2004.12 上智小劇場 ![]() アニュータ史上最大規模のスケールとなったこの公演。
初めてシェイクスピアの悲劇に挑戦。 よく知られている物語だけに、アニュータ版「ロミオとジュリエット」は、チェーホフの言葉「重要なのは、発砲ではない。ドラマはそこに至るまでとその後にある」をテーマに、ストーリーに関する部分は究めてシンプルに抽出し、シェイクスピアの原本にはない、各登場人物の思惑に焦点を当て、悲劇にまで至るプロセスと歯車が狂い出す微妙なニュアンスを丁寧に描いた。 もちろん、悲劇といっても根底に流れる雰囲気は「滑稽さゆえにもの悲しい」。各シーンの細部で「愚鈍」「徒労」といったこれまでアニュータの取り組んできたちっぽけな人間像を言及することを忘れずに、滑稽でおかしみのある世界観を創造。とくにロレンス神父のシーンでは、客席からクスクスといった笑いが絶えないほど。 しかし、なんといっても圧巻は舞台。 シェイクスピアの次々と変わるシーンの舞台設定をふまえて、演出の提案は、なんと「回転舞台」。吹き荒れる猛反対の中、舞台監督の小林英雄が色々な角度から考察。土台の骨組み、車輪の位置、回転軸をどうするか・・・。自動車のタイヤに使われているベアリングを回転軸に据えることを思いつき、平台の風車組など小林独自の手法で、ついに「直径7.2メートルの人力回転舞台」が完成した。初めて回ったときの感動は今でも思い出すだけで目頭が熱くなるくらいだ。 気合いの入った舞台に美術監督・小沼比奈子はディズニーシーに取材を敢行。示した方針は、「バター臭くない西洋建築」。細部にまで指示が飛ぶ。今回、舞台美術担当は、水田有子。Anjuta6「おもてなし」以来の登板だ。今回何が難しいって、回転舞台なのだ。つまり360度、お客さんの目に触れる。しかも一つの空間だけではなく、部屋の中、森、洞窟、書斎を示さなければならず、困難中の困難を究め、重ねたミーティングの回数も軽く20は超えるほど。しかし、水田の不眠不休でデザインした舞台は、水田らしい精巧な設計と細部に至る繊細なフォルム。森に囲まれるお伽の国(かといって甘っちょろくない)を創出した。 照明担当の井上ゆきのも果敢に不可能に挑戦。回転舞台上に室内間接照明を付けると言って聞かない。通常で考えれば、回転するものの上に間接照明を付けることは、コードが絡まってしまう等無理。しかし、井上は、スリップリングなるシステムを導入し回転軸に取り付け何周回ってもコードが絡まないことに成功。各シーンの明かりも絶妙を究め、回転による色々な顔を見せる舞台の雰囲気を見事に美しく仕上げた。 舞台と照明のコラボレートは特に観客からも絶賛の声が絶えなかった。 音響担当は、朝日勝雅。状況に応じた環境効果音を編集し、38シーン全てに環境音をつけた。しかもただの垂れ流しではなく、鈴虫ベースの右からはフクロウ、奥からは、犬、といった具合に指向性を強調。さらにロミオがジュリエットの死を知る場面では、遠くにオオカミの遠吠えなど、心理描写にも隠し味的に貢献した。 映像担当は、高山洋介。今回、「ロミオとジュリエット」ということもあり演出とミーティングを重ねた結果、シンプルかつデリケートに、雰囲気をくずさない出し方に気を配った。エンドロールの映像が入ってもなお、奥の舞台からは、登場人物の声だけが聞こえ、その声が、雨にかき消され、気付くと静かなテーマソングが入るという手法。 各セクション全スタッフが全力で臨んだ、最高傑作となりました。 |
CAST
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ロミオ
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石塚亮平 |
ジュリエット
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小林裕子 |
エスカラス公爵
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猪瀬隆 |
キャピュレット
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宇和川士朗 |
マキューシオ
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小沼比奈子 |
パリス
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菊地晋之介 |
ベンヴォーリオ
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小川英士 |
ティボルト
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渡邊繁彬 |
ロレンス神父
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川上裕介 |
ジョン神父
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朝日勝雅 |
バルサザー
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星聡美 |
ばあや
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瀧川かおり |
召使い1
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橋本幸子 |
召使い2
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山村哲 |
STAFF
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舞台監督
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小林英雄 |
美術監督
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小沼比奈子 |
舞台美術
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水田有子 |
装置
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新井杏美 |
水谷佑樹 | |
装飾
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野村彩子 |
照明効果
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井上ゆきの |
照明操作
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大脇志保 |
音響効果
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朝日勝雅 |
音響操作
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村里圭 |
映像効果
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高山洋介 |
映像操作
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竹谷真司 |
新井杏美 | |
衣装
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中島大 |
衣装補佐
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小林裕子 |
衣装協力
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本橋真由 |
池田典子 | |
平澤華子 | |
岩谷順子 | |
小道具
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瀧川かおり |
小道具補佐
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川上裕介 |
小道具協力
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遠藤奈々子 |
t-BRK
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小川英士 |
スチール
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河田祥吾 |
記録
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小沼青之 |
宣伝美術
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小沼比奈子 |
WEB
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朝日勝雅 |
制作
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中島大 |
小林太一 | |
AnjutaQuick | |
DVD製作
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高山洋介 |
CD製作
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菊地晋之介 |
公演グッズ
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渡邊繁彬 |
野村瞳
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上村佳也
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兼子慎平
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瀧澤潔
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木原俊之
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大賀優美
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小倉玄吉
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菊地貴代美
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石井健治
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ドイツ語劇団
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上智大学演劇協議会
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ユーフォリア
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劇団かんらん舎
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劇団リトルスクエア
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Sophia
Modern Dancers
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作
W・シェイクスピア
演出
猪瀬隆
協賛
(有)パムス
SEW(スペースエンジニアリングワークス)
ベルモント
企画/製作
アニュータ
Anjuta Arts
Anjuta Kids